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金正恩「米朝対話」の綱渡り

北朝鮮軍部に広がる「和平への不満」

2018年4月号

 三月十八日、ストックホルム。北朝鮮大使館から出てきた李容浩外相は質問を浴びせる記者団を一瞥もせず、空港に向かう乗用車に乗り込んだ。流暢な「キングズ・イングリッシュ」を操り、社交的な性格で知られる李氏が外遊中、全く口を開かないのは極めて異例なことだ。李氏が帰途に就く頃、ヘルシンキに降り立った北朝鮮外務省のチェ・ガンイル北米副局長は厳重な警護に囲まれ、やはり記者団を完全に無視した。対話の流れが強まるなか、北朝鮮外交官たちの沈黙は何を意味するのか。
 金正恩朝鮮労働党委員長は三月五日、韓国特使団に「非核化への明確な意思」を示したという。文在寅韓国大統領と四月末に会談することで合意しただけでなく、トランプ米大統領との会談も希望した。ところが、労働新聞など北朝鮮官営メディアは、南北首脳会談は伝えたが、米朝会談については沈黙。同月二十日夜、ようやく国外向けの朝鮮中央通信が「我々の主導的措置と平和愛好的な提案によって朝米関係に変化の機運が生まれている」と報じたが、米朝首脳会談には口を閉ざしたままだ。
 米朝の仲介人を自負する韓国政府は楽観的だ。政府関係者は「北韓が当日まで最高指・・・