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社会・文化

シンガポール「大学躍進」の光と影

東大が勝てない「アジア一位」の実力

2018年3月号

 マレー半島の先端にある人工国家・シンガポールが、国民一人当たりの年間GDP(国内総生産)で日本を抜き去って久しい。彼我の差は開く一方だが、最近では医療などを中心に研究の分野でも存在感を増している。そのことを端的にあらわすのが、いわゆる「大学ランキング」で、この国を代表するシンガポール国立大学(NUS)がここ数年、東京大学を上回っている。しかもこれはGDPと同様に逆転は不可能だという。
 シンガポールはとにかく狭い。南北約二十キロメートル、東西に約四十キロメートルの島国は「東京二十三区とほぼ同じ面積」と表現される。この小さな国土に国立大学は四つある。中でも「国の頭脳」と呼ばれるのがNUSだ。同国の南西部、ウェストコーストエリアにあるキャンパスの広さは約百五十ヘクタール。東京ドーム三十個分を超え、本郷と駒場を合わせた東大の面積の倍近くとされる。
 NUSは二〇〇〇年頃まではここまで注目される大学ではなかった。ASEAN(東南アジア諸国連合)ではトップレベルを誇っていたが、東大や京都大学はもちろん、韓国のソウル大学や中国の清華大学とは比較にならなかった。現在では世界の先・・・