二月の平昌冬季五輪の開会式に出席した各国の要人では、安倍晋三首相、ペンス米副大統領、北朝鮮の金与正氏の言動ばかりが注目された。その陰に隠れ、ほとんど話題にならなかった人物がいる。中国の習近平国家主席の代理として出席した韓正氏だ。
　三月の全国人民代表大会で、筆頭副首相に選出される予定の韓正氏は江沢民元国家主席の側近として知られ、昨年秋の党大会で、序列七位ながら政治局常務委員に選出された。
　江沢民派はいま、周永康氏や郭伯雄氏ら多くの大物政治家が失脚したほか、生き残った曾慶紅氏、李嵐清氏らも高齢に伴い表舞台に出てくる場面が激減した。その中で、韓正氏は現在、最高指導部の中で、江沢民派の唯一の代表となった。
　ただ軍や地方官僚の中には、かつて江派の恩恵を受けた幹部がいまだに多くおり、現在も横に広がる連携で巨大なネットワークを形成している。韓氏は彼らを束ねる存在として、序列七位以上の影響力があるといわれる。いまは、党内最大勢力の習近平派とも、反主流派といわれる李克強氏、汪洋氏らとも一定の距離を置いているが、将来、もし両派の対立が先鋭化すれば、韓氏が率いる旧江派は・・・