トランプ「通商戦争」の自縄自縛
保護主義で「大損」するのは米国
2018年3月号
ドナルド・トランプ米大統領が就任一年を経て、選挙公約だった保護貿易的通商政策に本格的に乗り出した。「貿易赤字」をほとんど唯一の指標にして、中国を筆頭にした対米貿易黒字国に是正を迫るもので、「国家安全保障上の懸念がある」ことを理由に、世界貿易機関(WTO)のルールを無視する構えだ。
背景には、第二次世界大戦後の大統領で最も不人気な状態を脱したいという政治的な意図があり、中国や欧州連合(EU)は報復措置の導入を明示している。リーマンショックから十年を迎えた今年、世界経済は新たな通商戦争の泥沼に引き込まれるのだろうか。
「全世界に向けた宣戦布告」
最近のホワイトハウスにテレビ生中継が入る時は、ベテランの政治記者さえ目を見張るほどハプニング満載だ。
過去の大統領は自分の政策のさわりだけ語って、メディアが使いやすい場面を提供したが、トランプ政権はホワイトハウス広報の仕切りが悪く、大統領発言後に与野党から反論が出る様子まで、カメラが拾ってしまう。
二月十二日に行われた、・・・