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WORLD

中国の「電気自動車用鉱物」独占戦略

EV時代の覇権を巡る世界抗争

2018年3月号

 世界的に電気自動車(EV)需要が高まる中で、中国が二次電池(バッテリー)の原料であるリチウムやコバルトの確保で大きく他国をリードしている。EVの大衆化、大量生産が間近なことをにらんだ、大掛かりな国家戦略だ。
 一月下旬、国際ニュースの関心はスイスの保養地ダボスの世界経済フォーラムに集まっていた。
 だが、国際経済にとってより重要なイベントが、一万二千キロも離れたチリの首都サンティアゴで静かに進んでいた。中南米三十三カ国が加盟する「ラテンアメリカ・カリブ海諸国共同体(CELAC)」と中国の王毅外相の、中・中南米閣僚会議が開催されたのだ。
 王毅外相は全体会議だけでなく、精力的に個別会談をこなした。業界関係者が目を見張ったのは、ホスト国チリ、アルゼンチン、ボリビア三国外相との個別会談だった。
 EVの二次電池で最も重要な鉱物リチウムの生産では、チリが世界第二位、アルゼンチンが同四位。そしてボリビアには、ほとんど未開発ながら、世界のリチウム埋蔵量の四分の一があるとされる、ウユニ塩原(塩湖)がある。南米三国の外相は、自国とは全く関係のない、中国の「一帯・・・