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炎上する「イラン・イスラエル抗争」

「米国不在」中東情勢の悪化が加速

2018年3月号

 イランとイスラエルの戦史が将来書かれるとすれば、プロローグは今年二月十日の午前四時(現地時間)に始まるだろう。
 シリア領内奥深く、古代遺跡パルミラから近い場所にある秘密施設から、イラン保有の無人機(ドローン)が飛び立った。約三十分後、出撃したイスラエル軍がこのドローンをヨルダン国境近くで撃ち落とした。
 イスラエル軍に緊急出撃命令がかかり、午前五時半にはイスラエル軍機がイラン施設に到達して激しい空爆を加えた。だが、ほぼ同時刻に、シリア領内から発射された地対空ミサイルがイスラエル軍のF︲16を捕捉し、撃墜した。イスラエル軍機が撃ち落とされたのは、第四次中東戦争以後、なかったことだ。
 イスラエル軍はその後、シリア領内の約十の標的に近年例のない規模で、空爆を続けた。
 十日の午後遅く、イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は電話をとった。相手はロシアのウラジーミル・プーチン大統領だ。
「イスラエルには自国防衛の権利がある」
「事態がエスカレートするような危険なことは避けてほしい」
「イスラエルはロシア政府とは協力を続・・・