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英国原発建設という「底なし沼」

日立もはまる「工期延長とコスト膨張」

2018年3月号

 欧州で最も野心的な原発とされる、英国の「ヒンクリー・ポイントC」原発の建設に、またも暗雲が垂れこめている。
 同原発は建設コストも電力コストも桁外れ。それでも、歴代英政府の支持で辛うじて続いてきた「政治案件」だった。
 ところが、昨年から今年にかけ、コストや技術への疑念が再燃し、関係者はいつ政府から「見直し」の声が出るかひやひやしている。英国の原発建設に賭ける日立製作所など、日本企業にとっても目が離せない展開だ。

英納税者負担は四兆五千億円

 不安の根源は、ヒンクリーの建設を請け負う「EdF」(フランス電力)だ。
 テリーザ・メイ英首相が「やる」と決断したのは二〇一六年九月。後述するように、有権者には様々な仕掛けを使って、見掛けの工費が抑えられた(発表時の総工費は百八十億ポンド〈二・七兆円〉)。さらに中国広核集団(CGN)まで出資するというおまけまでつけた。
 ところが、発表から一年もたたないうちに、EdFは「お得意の『見直しカード』」(業界関係者)を次々と出し始める・・・