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経済

《企業研究》日立製作所

「東芝の二の舞」海外原発で破滅の道へ

2018年2月号

 欧米社会は「罪の文化」、日本社会は「恥の文化」と言われる。すなわち、日本人の行動原理は内面的な良心ではなく、義理や報恩をめぐり他者から受ける外面的
な評価に根差しているという主張である。
 米国の文化人類学者、ルース・ベネディクトが唱えたこの二分法はやや乱暴ではある。しかし、世間に恥じずに生きること、逆に言えば「公(大義)のために私を空しくする」ことを、最大の徳目とする武士道由来のモラルが、日本社会に高い濃度で浸透していることは事実だろう。
 では、日立製作所にとって“大義”とは何なのか――。五月末、会長の中西宏明が同社初の経団連会長に就く。かつての東芝や新日本製鐵、東京電力といった財界クラブの常連メンバーは、業績低迷や事実上の経営破綻に陥った。もはや日本経済の舵取りに貢献できる企業は日立しかなく、公のために死力を尽くすというのであれば、その覚悟は勇邁と言える。
 中西は前会長の川村隆の右腕となり、二〇〇八年度に七千九百億円もの最終赤字へ転落した日立を、三年でV字回復させた立役者。それ以前も欧州事業の拡大や、不振の米国の・・・