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習近平「権力一極集中」の危うさ

「側近不足」孤独な独裁者の陥穽

2018年2月号

 その一報に触れた北京の軍専門家が、驚きを隠すこともなく語る。
「思わずのけぞったよ。本当にこんな日がくるなんて。軍にとって最大級の変革と言っていい」
 昨年十二月二十七日、中国国営新華社通信が流したニュースに衝撃が走った。「中国共産党は二〇一八年一月一日午前零時から、人民武装警察部隊(武警)の指揮権を中央軍事委員会に一本化することを決定した」。それがいかなる意味を持つかは後述するとして、まずは武警の説明が必要だろう。
 武警は、主要都市や国境に配備された準軍事組織だ。公安(警察)には許されないロケットランチャーなどの重火器や装甲車を所持することから、「第二の軍事力」とも呼ばれる。国内治安維持を指す「内衛」を主任務とし、要人警護、テロ対策、辺境警備、災害救助のほか金鉱探査やダム建設、消防まで役割は多岐にわたる。総兵力は〇六年の国防白書で六十六万人とされたが、以降は未公表。現在の実数は、八十万人とも百五十万人とも言われる。人民解放軍の陸軍が総員百六十万人であるから、それに次ぐ規模だ。

クーデターを恐れる・・・