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経済

《クローズ・アップ》中西宏明(経団連次期会長)

財界総理を射止める「運だけの人」

2018年1月号

 日本経済団体連合会(経団連)の次期会長に日立製作所の中西宏明会長(七十一歳)が就任することが内定した。日本の製造業の代表格で海外での知名度も高い企業でありながら、今まで経団連はじめ財界団体トップを出してこなかった日立にとって大きな転換となる。ただ、内実は他に候補者がいないという「財界人不作の時代」の消去法であるのも確かだ。
「運のいい人」。中西氏の経団連会長内定の記事を見た日立OBの反応は概ねこうだった。「東京大学工学部卒」という学歴はかつてなら日立の社長就任の必要条件だったが、今はそうではない。中西氏の経歴も「負け組」の情報通信畑を歩んだうえ、役員になってからの主担当は業績悪化の〝戦犯〟とも言われた日立グローバルストレージテクノロジーズで、そのトップを務めた。IBMがハードディスクドライブ事業を切り離し、日立に押しつけた部門だ。日立存続の危機に、川村隆氏が突然、傍流子会社から呼び戻され、日立のトップに就いた。そこで進めた「生き残り改革」で、液晶、プラズマパネルとともに真っ先に切り捨てられた事業だった。
 本来なら中西氏のサラリーマン人生もその時点で終わっていても・・・