外交不能の米「国務省」
世界秩序「大混乱」の震源地に
2018年1月号特別リポート
何かが狂っているとしか表現の方法がない。米トランプ政権内でホワイトハウスと国務省が、縄張り争いをしているとの単純な話ではない。よくよく考えた上での人事であったかどうかは別として、米・石油メジャー最大手エクソンモービルの前会長兼最高経営責任者(CEO)を国務長官に据えたまではよかったが、米外交は一年近く迷走を繰り返してきたのだ。大統領と国務長官との個人間の感情的対立が先ず発生した。大統領は辞めろと命令をしないし、国務長官も自ら辞意を表明しない。外交政策の面では両者の発言が微妙なところで食い違う。国務長官は政策よりは国務省の「再設計」に異常な熱意を示す。三一%の予算削減の実現だ。外交官は本来の仕事よりも自分の人事その他の処遇に気を取られる。
戦後の国際秩序は、米国のトルーマン大統領の下でアチソン国務長官が設計した西欧型民主主義の拡大ならびに貿易の自由が中心になって現在に至っている。皮肉なことにこれにブレーキを掛けたのは「米国第一主義」を唱えているトランプ大統領である。外交面では環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)から脱退し、地球温暖化対策の国際的枠組みであるパリ協定からも離脱・・・
戦後の国際秩序は、米国のトルーマン大統領の下でアチソン国務長官が設計した西欧型民主主義の拡大ならびに貿易の自由が中心になって現在に至っている。皮肉なことにこれにブレーキを掛けたのは「米国第一主義」を唱えているトランプ大統領である。外交面では環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)から脱退し、地球温暖化対策の国際的枠組みであるパリ協定からも離脱・・・