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習近平「訪日乞い」はやめよ

「懇願」安倍の足元をみる中国

2017年12月号

「一顰一笑」とは中国の古典『韓非子』にある故事成語である。表情の変化や機嫌を指し、戦国時代・韓の昭侯が「君主の表情は家臣がよく見ており、しかめ面にも笑顔にも気をつけなければならない」と説いたのが謂れだ。演説で古典の引用を好む習近平国家主席がこれに倣ったかはともかく、日中首脳会談における習主席の一顰一笑は、日中関係の「現在地」を国民に知らしめる重要な役割を果たしている。
 安倍晋三首相との六回目の顔合わせとなった十一月十一日、ベトナム・ダナンにおける日中首脳会談の冒頭撮影で、習主席の表情は「微笑」にまで辿り着いた。視線をそらして仏頂面を貫き、両国の国旗さえ掲げなかった三年前の北京APECでの初対面と比べれば、その変化は小さくない。四十五分間の会談もまずまず友好的で、両首脳は互いの再任を祝い関係改善への努力を確認した。
 だが、釈然としない読者もいるはずだ。日中両国にとって、近年の懸案は大きく二つ、尖閣諸島と靖国参拝など歴史認識を巡る問題だった。この点で双方が歩み寄った事実はない。中国公船による尖閣周辺の領海侵入や中国機に対する航空自衛隊の緊急発進(スクランブル)は依然・・・