三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

中国「権威主義統治」の時代錯誤

マルクス主義に「先祖帰返り」する習近平

2017年12月号

 中国で習近平国家主席に対する個人崇拝運動が一層強化され始めた。十月末、共産党大会を終え、二期目の総書記任期が始まると、「習近平の新時代」到来を告げるように習近平の肖像画が街角の新聞スタンドに並んだ。天安門に掛かる毛沢東の肖像画とよく似た構図だ。大衆の心の底に潜む毛沢東崇拝を習近平崇拝にすり替え、政権の威信を高めようという古くさい政治手法だ。
 世界第二の経済規模に成長した中国だが、権威主義的な共産党統治下で「個人主義」は育っていない。ひとたび共産党が号令をかければ、すすんで習近平の肖像を教室に飾る学校が登場した。「習近平新時代」の歌を作って広める企業もあれば、電車の中で職員が愛国歌を歌う町もある。
 個人崇拝の宣伝は中国国外にも向けられた。来年、マルクス生誕二百年となるのを記念して、生家があるドイツのトリーア市に巨大なマルクス像を寄贈する。世界のトップリーダーを自任する習近平は、自らの権威の根拠をマルクス主義に求めた。
 党大会で今世紀中葉までに十三億の中国人民がすべて金持ちになる「現代的社会主義強国」を実現すると言い切った習近平を、中国は「現代の傑出し・・・