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経済

企業不正続発は「国民性」の問題

山折哲雄 (哲学者)

2017年12月号

―素材メーカーや日産自動車など日本の大企業に不正が続いています。日本人の勤労倫理がおかしくなっているのでしょうか?

山折 日本伝統の価値基準では本来、正邪や善悪を行動の基準にしない。
 一神教で「神を畏れる」ような、厳しい正邪善悪の感覚を、日本人は持っていない。むしろ日本の社会では、共同体の中での「義理」「人情」や「勇気」といった価値観を大切にする。
 今日で言えば、会社のために、多少悪いことをしても、それで全体が良ければいいというのが、日本人の考え方だ。ただし「小さな悪」は、この程度ならいいだろうと高をくくっていると、途方もなく肥大化する。各企業で噴出する問題は、こんな風にいつのまにか拡大していったのではないか。
 そもそも大企業こそ、企業戦士たちが世界中で売りまくっていった際、常に正しい手順でやってきたわけではあるまい。相手を出し抜くのも方便で、全体で帳尻が合えば良かったのだ。

―新しい企業倫理が必要ですか?

山折 それ・・・