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連載

日本の科学アラカルト87

レアアースを使わない「強力磁石」の開発

2017年11月号

 フランスの「化石燃料自動車廃止」宣言に続き、欧州の自動車メーカー・ボルボが二年以内に販売全車種を電気自動車(EV)もしくはハイブリッド車(HV)にすることを発表。さらに、世界最大の自動車市場である中国も「EVシフト」を敷くことがわかり、改めてEVに注目が集まっている。米テスラモーターズの例を見るまでもなく、部品数が限られたEVへの参入障壁は低く商機を生む。
 従来のボディやタイヤといったパーツ以外には、極論すればあとはモーターと電池だけがあればいい。EVの鍵を握る蓄電池とモーターの性能競争は今後、これまで以上に熾烈を極めるだろう。
 今回は自動車のエンジンにあたるモーターに関する研究をみてみよう。モーターが発明されたのは二百年近く前、一八二一年にマイケル・ファラデーによって初の電動機(モーター)が作られた。我々の身の回りに溢れている、成熟した技術といえるが、それでも進化のフロンティアは残されている。
 モーターの性能を左右する要素はいくつかあるが、最も大きいのは磁石の強さと言っても過言ではない。
 小学校の実験などで使い、かつて遊んだ模型用モー・・・