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経済

中部電力「顧客喪失」の地獄絵図

関電と東電の「侵略」に為す術なし

2017年10月号

 所詮はその程度の実力だった、ということだろう。東日本大震災以降、電力業界の盟主を自称してきた中部電力が、窮地に立たされている。原因は原子力発電所の再稼働だ。中部電は原発ムラの執念を見誤り、原発抜きの戦略を敷いてきた。それが裏目となり、中部電管内は今や、原発再稼働で勢いづく関西電力の草刈り場になろうとしている。一時もてはやされた東京進出も成果をあげられず、東京電力と立ち上げたJERAは中部電の資産を東電が吸い上げるだけの装置になってしまった。それどころか、東電には見事に裏切られ、越境進出によって管内を荒らされるという憂き目にあっている。ただ、のぼせ上がった三男坊の感度は鈍く、自分の置かれた立場を今も理解できずにいるようだ。
 中部電の事業は、実のところじり貧だ。同社の主力商品である電気の販売量は、底打ちが見つからない状態にある。二〇一六年度の販売電力量は一千二百十八億キロワットアワーだったが、これは五年前の一一年度よりも四・七%低い。一一年度といえば、東日本大震災が発生した年にあたり、その後は原発がストップしたことで国を挙げての節電が行われた。「販売量が伸びないのは節電が定着・・・