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中国の「属国化」進むタイ軍政

日本企業を脅かす「紅い資本」の猛威

2017年10月号

 タイのプラユット政権は国民の根強い軍政批判を無視したままその座に居座り続け、民政移管への行程表は現状ではまったく見えない。タイ経済は観光収入の増加、政府のインフラ投資などで今年四〜六月に三・七%成長など一見、持ち直してはいる。だが、外資の直接投資は停滞し、むしろ人手不足、賃金上昇で「タイ脱出」が加速しつつある。そうした出口のないタイ政権に救いの手を差し伸べているのが中国。自動車、電子など中国企業のタイ進出は勢いを増し、金融でも中国式スマホ決済が席巻しつつある。タイに東南アジア最大の基盤を築いてきた日本企業は足元を侵食されつつある。
「洛加納工業園 享受BOI投資特恵政策」。今春、バンコク中心部からアマタナコンなど日本企業が集積する東部に向かう高速道路にこんな看板が立てられた。「ロジャーナ工業団地ならタイ投資委員会の優遇政策を受けられます」という意味で、言うまでもなく中国企業向けの広告だ。これ以外にも「倉庫出租(レンタル倉庫)」「工廠出租(レンタル工場)」などバンコク近郊にはこの数カ月で中国語の看板が急増している。
 中国の大手民族系自動車メーカー、上海汽車がバンコ・・・