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ブラジルがまさかの「経済回復」

テメル政権が「国民不人気改革」断行

2017年10月号

 ブラジル国民はすっかりシニカルになっている。映画「連邦警察~法はすべての人のために~」が九月に封切られ、一千以上の映画館でヒットを飛ばしている。二〇一四年から行われ、今も続く石油大手ペトロブラスを中心とした汚職問題を捜査する「洗車作戦」を題材にした映画で、ルーラ元大統領が悪玉として描かれている。笑うしかないのだ。景気後退のさなかにルセフ前大統領にとって代わったテメル政権発足から一年が過ぎたが、現政権の支持率は三十一年間で過去最低の五%にまで落ち込んでおり、民主主義への失望が国民の心理を覆っている。
 混乱の詳細は改めて語る必要もないだろう。だが、株式市場はなぜか史上最高値を更新している。この「失望する国民」と「期待する市場」というパラドックスは何だろうか。

「首を切られて走り回る鶏」

 同国の株価が上がる要因はいろいろある。ブラジルの金融環境は利下げ段階にあり、いわゆる「不況の株高」になりやすいことが一つ挙げられる。また世界的に低金利で株式市場が割高(益回りの低下)になっており、リスクを取った海外・・・