三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

中国・インド「一帯一路」の攻防

「国境紛争危機」の深刻な行方

2017年9月号

「インドへの応援が日本大使の本音かもしれないが、事実関係を把握する前にでたらめを言うのはやめてもらいたい」
 八月十八日、中国外務省の女性報道官、華春瑩氏は定例記者会見で、平松賢司駐インド大使を痛烈に批判した。中国とインド軍が対峙しているドクラム高地について、平松大使が「ブータンの一部」と認め、「日本はインドの立場を支持する」と発言したとインドメディアが報じたことが、中国の逆鱗にふれたようだ。
 日本の在ニューデリー大使館は、報道直後に「大使は『力による一方的な現状変更を行わないことが重要だ』と述べたが、『インド支持』を表明していない」と釈明した。それでも中印両国で大きな反響を呼ぶのは避けられなかった。
 インドはもちろん大歓迎だ。「タイムズ・オブ・インディア」紙は「(今回の危機で、)日本は(インド支持の)立場を明らかにした初めての大国だ」と喜びを表現した。
 中国はきわめて不快である。東シナ海で尖閣諸島の領有権をめぐり、中国と対立する日本が、西のヒマラヤ山麓周辺地域の領有で争うインドと手を結ぶことは、中国にとって悪夢に他ならない。中国国内のイン・・・