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社会・文化

税金がぶ飲み「医療公共事業」

ハコモノと無駄研究で壮大な浪費

2017年8月号

 少子高齢化の加速でとめどなく膨張する社会保障費。生命を救うという美名の陰で利権にまみれたカラクリが血税を侵食している実態は知られていない。それは医療公共事業とも呼ぶべき浪費だ。
 象徴は、安倍政権が鳴り物入りで二〇一五年に発足させた「日本版NIH(米国立衛生研究所)」こと「国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)」で、ライフサイエンス(生命科学)研究を旗印に掲げるAMEDの予算は年間一千四百億円超に上る。
 だが、その資金を投入する中核施設の国立がん研究センター(国がん)は今、存続の危機に瀕している。最大の理由は、ライフサイエンスに名を借りた箱物への過剰な公金の投下だ。AMED本体の研究や支援プロジェクトのほか、重粒子線治療など最先端技術にも税金の垂れ流しが散見される。この野放図な浪費を放置すれば、医療公共事業がライフサイエンスの発展を阻害する倒錯した結果を招きかねない。
 ライフサイエンスは生命現象の複雑なメカニズムを解き明かし、医療・創薬の発展ばかりか食料や環境問題の解決に結びつける研究で、成長戦略の大きな柱だ。国がんの財務諸表を分析すれば、・・・