三万人のための情報誌 選択出版

書店では手に入らない、月刊総合情報誌会員だけが読める月間総合情報誌

WORLD

「難民」で荒稼ぎする伊マフィア

新ビジネスは収容施設「乗っ取り」

2017年7月号

 記録的な数の難民が押し寄せているイタリアで、同国のマフィアが難民対策事業を新たな収入源にしていることが分かった。難民施設を運営する自治体の職員やカトリック教会の聖職者を抱き込んで公費をごっそり横領するという、極上の新ビジネスである。
 今年五月に摘発された横領事件は、マフィア慣れしているイタリア国民をも驚かせた。
 舞台になったのは、長靴に例えられるイタリア半島の、アーチライン(土踏まず)前方部分にあるクロトーネ県の収容施設「聖アンナ収容センター」だった。
 イタリアに到着した難民は、当座の小遣いとして政府から一日当たり二ユーロ五十セントが支給される。ところが、「聖アンナ」を運営するカトリック教会の慈善団体「ミゼリコルディア(慈悲)」は、この小遣いを難民に渡さず、代わりに五十セント相当の菓子を与えていた。
 難民にとって最低限の現金支給までかすめ取るのだから、食事、収容所内の衛生施設や各種サービスはごまかし放題だった。摘発前に地元の保健所職員がひそかに、収容センターの食事を運び出して調べたところ、肉や米、豆はいずれも成人の一食分にはるかに足りず・・・