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社会・文化

メディアは安倍「忖度報道」を止めよ

カーステン・ゲルミス(独紙元東京特派員)

2017年7月号

 ―東京特派員の時に、報道について外務省から圧力を受けましたね?
 ゲルミス 駐在が終わりに近づく二〇一四年八月に、フランクフルトの本社に、日本の駐フランクフルト総領事がやってきて、私の上司と話をした。私の記事に「誤解」があるとして、中国が私の記事を宣伝に使っていることを指摘したという。「賄賂」を受け取っているのではという示唆もあり、私の上司は怒ってお引き取りいただいた。
 記者人生で、取材先と内容をめぐって話すことはしょっちゅうだが、総領事が自分の上司に記事内容に関して抗議したのは、唯一無二の事件だった。
 問題は、慰安婦問題と戦争責任だった。私は在任中何度も韓国に行き、元慰安婦に会った。歴史の証言を書くことだけで、「反日」「中国、韓国の宣伝」と非難するのは間違っている。

 ―総領事は自分の意思で本社に抗議に来たのですか?
 ゲルミス 「東京のために来た」と言ったという。外務省の意向だろう・・・