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連載

本に遇う 連載211

読売や、ああ読売や
河谷史夫

2017年7月号

 WOWOWでドラマ「社長室の冬」を見た。大新聞が発行部数の減少で経営危機に陥り、外資系ネット通販会社に身売りを図る。
 外資系の条件は苛烈で「紙の新聞全廃」である。用紙代不要、印刷工場不要、販売店不要で経費削減だが、大幅な機構縮小と人員整理は必至だ。けれど解雇はしない、全員救済するとの約束で実現しかかる。だが反対する社主家の暗躍で頓挫。小規模化で題字は残るものの部数減は続き、誰にも春は来ないという新聞冬物語であった。
「ジャーナリストの魂を捨てるのか」とか「民主主義を守るのは新聞だ」とか、大仰な科白が飛び交う場面には辟易したが、部数激減に広告収入ガタ落ちが重なって、新聞経営が今日暗いトンネルに入っていることは間違いない。
 明治以来の紙齢を持つ全国紙で、社主家の関わる美術館があるとくれば、わが古巣の朝日新聞がモデルかも知れず、「たかがドラマ」と思いつつ、つい見てしまった。原作があると聞き、読もうかと思う矢先にそれどころでなくなった。作者の堂場瞬一は読売新聞にいたというが、その読売の「ジャーナリストの魂」に驚くべき変調が現れたのである。将来を云々するよりも・・・