《罪深きはこの官僚》中村格(警察庁組織犯罪対策部長)
安倍べったり記者を「情実捜査」
2017年7月号公開
「警察内部でも不審感が高まっている」
ある警視庁関係者はこう打ち明ける。首相、安倍晋三と昵懇のジャーナリスト、山口敬之に出された逮捕状の執行を、警視庁刑事部長だった中村格が止めた「忖度疑惑」。「週刊新潮」が五月に報じたこの問題は、その後、被害者女性が記者会見を行い、舞台は検察審査会へと移った。女性の訴える「準強姦」の有無については司法判断を待つ以外にないが、中村が逮捕状執行を直前で差し止めたことが極めて異例であるのは間違いない。
「捜査を行っていたのは警視庁の高輪署。いわゆる所轄であり、逮捕状云々に本庁の刑事部長が口を出すこと自体が稀だ」
警視庁担当記者の一人はこう語る。しかも今回は、執行の直前、空港で「被疑者」を待ち構えていた捜査員を押しとどめたというからますます不可解だ。しかも中村は週刊新潮の取材に対して「(逮捕の中止を)私が判断した」と明確に答えたのである。
「本来は『個別の捜査案件についてコメントしない』と回答すべきだった。警察内部ではこの対応を疑問視する声が上がっている」
別の警視庁担当記者はこう語る。中村は「自信家」(同記者)と評されることが多く、メディアをあしらえると考えたのだろう。
中村は、東京大学法学部を卒業後、一九八六年に警察庁に入庁した。警視庁の捜査二課などで経験を積んでいたが、民主党政権が誕生した二〇〇九年九月、内閣官房長官の秘書官に「出向」となる。その後、民主党時代はもちろん、一二年十二月に自民党が政権に返り咲いた後も引き続き秘書官として留め置かれた。最終的に一五年三月に警視庁刑事部長に就くまで足掛け七年も内閣官房に居続けたのは「出世コースから外れたから」(警察庁関係者)というのが衆目の一致するところだ。中村について「キャリアには珍しく部下の面倒見がいい」(前出警視庁関係者)という評価がある一方、「細かいことにも口を出す」(警察庁担当記者)という指摘もある。今回の逮捕状執行差し止めはマイクロマネジメントの賜物というべきだろう。
そもそも、なぜ今回の「事件」が刑事部長のもとに報告されたのか。実は、警視庁では「マスコミ関係者に容疑がかかった事件は広報部長などに報告されるようになっている」(前出警視庁関係者)という。容疑となった「行為」が行われた一五年当時、山口はTBSの社員だったため警視庁上層部に情報が上がったのである。
情報を得た中村が、二年前の三月まで上司だった官房長官、菅義偉に報告したかどうかは不明だ。しかし「中村が、山口のことを事前に知っており、首相と抜き差しならない関係であることを認識していたことは間違いない」と、ある警視庁幹部は断言する。官邸の指示の有無にかかわらず、中村自身の判断で逮捕を止めても不思議ではない。それも中村の過剰なまでの自信のなせる業なのだろうか。
昨年八月に警察庁の組織犯罪対策部の部長に就任した中村は現在暴力団対策に追われている。周囲を見渡すとそろそろ局長クラスに上がる同期が出てきてもおかしくないが、「中村はさすがに昇格が見送られる」(別の警視庁関係者)という。しかしそれで禊が済むわけではない。恣意的な捜査現場への介入について国民に対して説明する責任があるだろう。(敬称略) 【2017年7月号掲載】
ある警視庁関係者はこう打ち明ける。首相、安倍晋三と昵懇のジャーナリスト、山口敬之に出された逮捕状の執行を、警視庁刑事部長だった中村格が止めた「忖度疑惑」。「週刊新潮」が五月に報じたこの問題は、その後、被害者女性が記者会見を行い、舞台は検察審査会へと移った。女性の訴える「準強姦」の有無については司法判断を待つ以外にないが、中村が逮捕状執行を直前で差し止めたことが極めて異例であるのは間違いない。
「捜査を行っていたのは警視庁の高輪署。いわゆる所轄であり、逮捕状云々に本庁の刑事部長が口を出すこと自体が稀だ」
警視庁担当記者の一人はこう語る。しかも今回は、執行の直前、空港で「被疑者」を待ち構えていた捜査員を押しとどめたというからますます不可解だ。しかも中村は週刊新潮の取材に対して「(逮捕の中止を)私が判断した」と明確に答えたのである。
「本来は『個別の捜査案件についてコメントしない』と回答すべきだった。警察内部ではこの対応を疑問視する声が上がっている」
別の警視庁担当記者はこう語る。中村は「自信家」(同記者)と評されることが多く、メディアをあしらえると考えたのだろう。
中村は、東京大学法学部を卒業後、一九八六年に警察庁に入庁した。警視庁の捜査二課などで経験を積んでいたが、民主党政権が誕生した二〇〇九年九月、内閣官房長官の秘書官に「出向」となる。その後、民主党時代はもちろん、一二年十二月に自民党が政権に返り咲いた後も引き続き秘書官として留め置かれた。最終的に一五年三月に警視庁刑事部長に就くまで足掛け七年も内閣官房に居続けたのは「出世コースから外れたから」(警察庁関係者)というのが衆目の一致するところだ。中村について「キャリアには珍しく部下の面倒見がいい」(前出警視庁関係者)という評価がある一方、「細かいことにも口を出す」(警察庁担当記者)という指摘もある。今回の逮捕状執行差し止めはマイクロマネジメントの賜物というべきだろう。
そもそも、なぜ今回の「事件」が刑事部長のもとに報告されたのか。実は、警視庁では「マスコミ関係者に容疑がかかった事件は広報部長などに報告されるようになっている」(前出警視庁関係者)という。容疑となった「行為」が行われた一五年当時、山口はTBSの社員だったため警視庁上層部に情報が上がったのである。
情報を得た中村が、二年前の三月まで上司だった官房長官、菅義偉に報告したかどうかは不明だ。しかし「中村が、山口のことを事前に知っており、首相と抜き差しならない関係であることを認識していたことは間違いない」と、ある警視庁幹部は断言する。官邸の指示の有無にかかわらず、中村自身の判断で逮捕を止めても不思議ではない。それも中村の過剰なまでの自信のなせる業なのだろうか。
昨年八月に警察庁の組織犯罪対策部の部長に就任した中村は現在暴力団対策に追われている。周囲を見渡すとそろそろ局長クラスに上がる同期が出てきてもおかしくないが、「中村はさすがに昇格が見送られる」(別の警視庁関係者)という。しかしそれで禊が済むわけではない。恣意的な捜査現場への介入について国民に対して説明する責任があるだろう。(敬称略) 【2017年7月号掲載】
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