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政治

政権とNHKに北方領土「やらせ疑惑」

プーチン宛て「元島民の手紙」の秘事

2017年6月号

「あの手紙に書かれた元島民の切実な思いに応える責務が、私にはある」
 北方領土問題の在任中解決を掲げる安倍晋三首相が、この言葉をやたらと繰り返している。手紙とは昨年十二月、ロシアのプーチン大統領に首相自身が手渡し、先方の心を揺さぶったと伝えられる「元島民の手紙」のことだ。悲願の北方四島返還への道筋を付けるための取り組みであれば、誰が非難しようか。ところが、プーチン氏宛てのこの手紙は「北方領土を返してほしい」という根本的な要求に言及せず、自由な墓参りを懇願するだけの内容にとどまっている。不自然極まりないのだ。霞が関界隈では「手紙は官邸が書いたようだ」(関係官庁筋)との観測が広がる。ロシアと事前にすり合わせた疑惑さえ漏れ始めた。交渉のゴールを領土返還から、解決の名に値しない「墓参」にすり替える「やらせ」に官邸が関与しているとすれば、安倍外交の根幹が崩れかねない。
 時計の針を昨年十二月十六日午後三時半に戻そう。官邸での日ロ首脳共同記者会見に臨んだ首相は、領土交渉の進展状況を尋ねる記者の質問に直接答えず、会談中に元島民の手紙をプーチン氏に手渡したエピソードを披露。「大統領・・・