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連載

本に遇う 連載209

キャスターの運鈍根
河谷史夫

2017年5月号

 国谷裕子のこの本を読んで、テレビのキャスターというのは女子一生の仕事であると思った。
 これが男子一生の仕事であるかどうかは知らない。男でキャスターと称したのは田英夫以来雨後の筍のごとくいたが、その体験を国谷のように述べた者はいなかった。彼らがキャスターという仕事とどう取り組み、何を生き甲斐としたかを知る由もないのである。
 キャスターとかコメンテーターと言えば、政界転出の踏み台にしたのがいたり、「TBSは死んだ」と言いながらTBSに出続けた筑紫哲也みたいなのがいたり、ただぺらぺらと口先ばかり達者だったのがいたりと、むしろ眉に唾をつけて眺めるのを習いとした。
 国谷裕子は一九九三年から二〇一六年まで二十三年間、NHKの「クローズアップ現代」キャスターの任にあった。現場が「来年も国谷でいきたい」と主張したにも関わらず、NHKは毎年更改してきた出演者契約を「番組リニューアル」を理由に打ち切った。
 そこには、新聞・放送を何かと牽制したがる安倍政権からの圧力があったのだろうとの憶測が流れたが、真相は分からない。ただしキャスターを降りた、あるいは降ろさ・・・