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連載

皇室の風105

毒を食らわば
岩井克己

2017年5月号

 天皇の退位に関する政府特例法案の骨子が四月半ばに一部で報道された。策定の前提となるべき有識者会議の最終報告も待たずリークされるなど現政権のメディア選別と情報操作ぶりは目に余ると思うが、取り敢えずこれによって論点を洗い出してみた。
「骨子」によると①皇室典範附則で特例法は典範と一体と規定する②退位に至る事情として、公的活動に精励してきた天皇が、今後は高齢で自ら続けることが困難となることに深い心労を抱いており、これを国民が理解し共感している③その状況に鑑み典範第四条の特例として退位を認め、必要事項とともに特例法で定める—という。
 去る三月十七日に衆参正副議長が政府に提出した各党協議の「とりまとめ」では、退位に至る事情を「昨年八月八日の『お言葉』は、国民の間で広く深い敬愛をもって受け止められている」としていたが、法案では「お言葉」への言及は削られ、天皇の心労への理解と共感との記述となった。共産党から「お言葉を重く受け止める」などの文言にクレームがつき、「天皇の意思」を連想させる「お言葉」の語を削ったものとみられる。
 しかし、正副議長とりまとめの・・・