新・不養生のすすめ(新連載)
認知症患者の人生の終え方
大西睦子
2017年4月号
二年ほど前のニューヨーク・タイムズ(NYT)紙で、私の自宅から車で三十分くらい離れたマサチューセッツ州デダムに住む、引退した弁護士ジェローム・マダーリ氏(八十八歳)の記事を読んだ。彼は、認知症に苦しむ知人を目の当たりにし、もし我が身に同じことが起きたら「死にたい」「少量のウオッカにバルビツレート(安楽死に用いる薬剤)を溶かして飲みたい」との心境を吐露している。だが米国では、認知症への安楽死の適用は認められていない。
そこでマダーリ氏は、仲間が推奨するように、「医療委任状」をプラスチックのケースに入れて、玄関の戸棚に吊るすことにした。医療委任状には、終末期の心肺蘇生、人工呼吸器や栄養チューブなどの生命維持治療の拒否を示している。日本では、認知症になってもできる限りの治療を施し、頑張って生きることが善とされるが、米国ではマダーリ氏のように、余計な医療の世話にならずに死を迎えることを望んでいる人は多い。
これは十八年前の、ミネソタ大学の研究者らの論文が示している。研究者らは、認知機能の正常な高齢者を対象に、もし認知症になったら、どのような生命維持の処置を受けたいかと・・・
そこでマダーリ氏は、仲間が推奨するように、「医療委任状」をプラスチックのケースに入れて、玄関の戸棚に吊るすことにした。医療委任状には、終末期の心肺蘇生、人工呼吸器や栄養チューブなどの生命維持治療の拒否を示している。日本では、認知症になってもできる限りの治療を施し、頑張って生きることが善とされるが、米国ではマダーリ氏のように、余計な医療の世話にならずに死を迎えることを望んでいる人は多い。
これは十八年前の、ミネソタ大学の研究者らの論文が示している。研究者らは、認知機能の正常な高齢者を対象に、もし認知症になったら、どのような生命維持の処置を受けたいかと・・・