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連載

皇室の風104

引かれ者の小唄
岩井克己

2017年4月号

「引かれ者の小唄は暫く歌い続けますよ」
 平成十七年十一月、小泉内閣の有識者会議が女性・女系天皇を容認する皇室典範改正の答申を決めた際に、宮内庁内の急先鋒だった幹部に「敗北宣言」した思い出がある。
 ずっと「拙速」「時期尚早」と慎重論を唱え続けていた。天皇の正統性の根底に関わる重大事の取り運びとしては安易で、必ず「万世一系の皇統の断絶」への反発が激化するというのが記者の勘だった。案の定、反対は予想を超えて燎原の火のように広がったが、それでも強行突破が固まったからだ。
 ところが、翌年二月、間もなく改正案が内閣部会にかかるというタイミングで秋篠宮妃の懐妊が明らかになり、典範改正は一気に挫折。国論分裂を顕在化させただけに終わった。多くの関係者が傷つき徒労感をかみしめた。「草の根の天皇制」の怖さである。
 件の幹部は「引かれ者はこちらでしたなあ」とつぶやいたものだ。
 光格天皇以来二百年ぶり、近代以降初めての天皇の退位が決まる。昨夏の天皇の「お気持ち」表明から約七カ月。退位に反対する保守派の強硬論が前面に出され、それに同調するメディアも現れる・・・