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社会・文化

古楽演奏「鈴木ファミリー」の隆盛

クラシック界「世界水準」の寵児たち

2017年4月号

 二十世紀後半、クラシック音楽界でSuzukiといえば、世界を席巻した才能教育「スズキ・メソード」だった。だが、二十一世紀の今、「世界のSuzuki」はメソード創設者鈴木鎮一ではない。齢六十過ぎ、白い髪と髭に穏やかな笑みをたたえた牧師のような風貌の紳士、Masaaki Suzukiだ。そして、雅明に連なる鈴木ファミリーこそ、Ozawaや東京クヮルテットに続く日本産クラシック音楽の世界ブランドなのである。

「真摯な」バッハを世界が評価

 欧米の主要な楽団やホール、音楽祭に定期的に招かれ、ヨーロッパのレコード会社からCDが途切れなく発売され、世界の主要教育機関で教師を務める—それが「国際的活躍」なら、二〇一〇年代の日本で最も国際的に活躍するのは、間違いなく指揮者兼オルガニスト鈴木雅明である。
 昨年のクリスマスから初夏までの鈴木雅明の活動を眺めてみよう。ロンドンで「啓蒙時代管弦楽団」を指揮したバッハ《クリスマス・オラトリオ》、帰国するや自ら創設したバッハ・コレギウム・ジャパン(以下BCJ)を・・・