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経済

《クローズアップ》小早川智明(東京電力HD次期社長)

「人事抗争」の末の昇格に危惧の声

2017年4月号

 新体制は機能するのか—、電力関係者の誰もが疑問を抱いたことだろう。会長に日立製作所の川村隆名誉会長の就任、社長に小早川智明取締役の昇格が報じられた東京電力ホールディングス(HD)の首脳人事は、二十一兆円超の原発事故債務を抱える公的管理企業の先行きの険しさを象徴する。とりわけ小早川氏の社長昇格は、二年越しの人事抗争の末の妥協の産物にほかならない。
 一年前、廣瀬直己社長ら東電守旧派と、原子力損害賠償・廃炉等支援機構および経済産業省の間で社長人事をめぐる確執があったことは周知の通り。數土文夫会長は早くから「次は辞めてもらう」と廣瀬氏の更迭を示唆し、経産省も昨年末、東電改革の有識者会議に人事刷新を提言させた。しかし、守旧派は「人事を刷新するなら会長も同罪」と譲らない。そこで日立の川村氏を拝み倒し、東京オリンピックまで続投する気だった數土氏に代わらせることで、廣瀬氏も副会長へ退く“痛み分け”に落着した格好だ。
 では、なぜ社長に小早川氏が登用されたのか—。それは、多くの決め手に欠く候補者の中でも、同氏は原賠機構と廣瀬氏の両方・・・