本に遇う 連載207
「忘却の穴」の子を救え
河谷史夫
2017年3月号
次から次へと事は起き、流れ去る。読み捨てていく新聞記事のなかで、しかしいつまでも胸に引っかかり続けるものがある。
原発事故で二〇一一年夏、福島から横浜へ避難した小学二年の男の子がいた。今は十三歳の中学一年生になっているが、転校先でいじめに遭い、学校に行けなくなった。いじめられた経緯を明かす手記が昨秋、新聞に出た。
「ばいきんあつかいされて、ほうしゃのうだとおもっていつもつらかった。福島の人はいじめられるとおもった。なにもていこうできなかった」「お金もってこいと言われたときすごいいらいらとくやしさがあったけど、ていこうするとまたいじめがはじまるとおもってなにもできずにただこわくてしょうがなかった」「ばいしょう金あるだろと言われむかつくし、ていこうできなかったのもくやしい」「いままでなんかいも死のうとおもった。でも、しんさいでいっぱい死んだからつらいけどぼくはいきるときめた」
記事に引用された手記の断章を、こう書き写していると、暗然としてきて、言うべき言葉がない。
転校直後から「ばいきん」と呼ばれていじめられたという。三年生で一度目の不登校に・・・
原発事故で二〇一一年夏、福島から横浜へ避難した小学二年の男の子がいた。今は十三歳の中学一年生になっているが、転校先でいじめに遭い、学校に行けなくなった。いじめられた経緯を明かす手記が昨秋、新聞に出た。
「ばいきんあつかいされて、ほうしゃのうだとおもっていつもつらかった。福島の人はいじめられるとおもった。なにもていこうできなかった」「お金もってこいと言われたときすごいいらいらとくやしさがあったけど、ていこうするとまたいじめがはじまるとおもってなにもできずにただこわくてしょうがなかった」「ばいしょう金あるだろと言われむかつくし、ていこうできなかったのもくやしい」「いままでなんかいも死のうとおもった。でも、しんさいでいっぱい死んだからつらいけどぼくはいきるときめた」
記事に引用された手記の断章を、こう書き写していると、暗然としてきて、言うべき言葉がない。
転校直後から「ばいきん」と呼ばれていじめられたという。三年生で一度目の不登校に・・・