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経済

《クローズアップ》平子裕志(全日本空輸次期社長)

不祥事続発「危険な翼」の新トップ

2017年3月号

 後任社長へのバトンタッチを発表するという、めでたい記者会見のはずだったが、会場には白けたムードが漂っていた。
 二月十六日午前十時過ぎ、ANAホールディングス(HD)が「重要な経営課題について午後三時から記者会見を行う」と発表した。刺激的な表題に、市場関係者は「すわ東芝同様の巨額損失発覚か」と反応し、株価は一時前日比七%安を付ける混乱ぶりを見せた。
 蓋を開けてみれば、発表されたのは中核子会社である全日本空輸の社長交代だけ。三月末に全日空の篠辺修社長が退任し、HDで取締役執行役員(財務企画、IR部、施設企画担当)を務める平子裕志取締役が後任に就くというものだった。後任に指名された平子氏は、一九八一年に東京大学経済学部を卒業し全日空に入社。企画室企画部長やニューヨーク支店長を歴任し、二〇一五年からはHDの執行役員に就任していた。社内では「エース級」と認められており、順当な人事に過ぎなかった。
 出足からケチがついた格好の平子新社長には重要課題が待ち構えている。予想されるのは日本航空(JAL)との競争激化だ。経営破綻後に公的支援を受けてきたJALは現在、国土・・・