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《世界のキーパーソン》ナフタリ・ベネット(イスラエル「ユダヤ人の家」党首)

中東和平をぶち壊す「次の首相候補」

2017年2月号

 米大統領選の結果が速報された時、ベネットは両手を高々と上げて叫んだ。「よしっ、これで『二国家』(構想)は終わりだ」。史上最も「親イスラエル」とされるトランプ大統領が、今月行われるネタニヤフ首相との首脳会談で何を語るか。中東の関心はその一点に集まっている。
 二国家とは、イスラエルとパレスチナ(アラブ人)が独立国家を持ち、共存するという和平構想。一九七四年の国連決議で盛り込まれて以降、九三年のいわゆる「オスロ合意」も含め、中東和平の基本的枠組みとして確認されてきた。
 ベネットらイスラエル右派の政治家は、パレスチナ国家建設を拒否し、主権を持たない「自治」にとどめるべきだと唱える。ベネットが二〇一二年に発表した構想は、ヨルダン川西岸を三分割し、イスラエルがその一つ、パレスチナが残る二つを治め、全体の安全保障はイスラエル国家の下に置く(ガザはエジプトに組み入れる)というものだった。
「パレスチナが『領土』と考える西岸や東エルサレムには、合計八十万人のユダヤ人入植者がいて、二国家構想のほうが、時がたつにつれて非現実的になっている」と、エルサレム駐在経験の長い大手・・・