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経済

三井物産と丸紅「ロシア事業」の巧拙

「官主導」資源案件で分かれる明暗

2017年2月号

 珍妙なほど力のこもったプレスリリースである。
〈日露の新たな互恵関係に寄与すると共に日本のエネルギー安定供給に貢献していきます〉
 北方領土返還に成果がないまま、日露首脳会談が期待外れに終わった昨年十二月十六日、丸紅はロシアのガス大手、ノバテクと北極圏ヤマル半島で開発するLNG(液化天然ガス)プロジェクトを発表した。
 すでにノバテクは仏中資本と「ヤマル1」を進めており、その生産能力は年五百五十万トンの液化設備が三系列と膨大だ。今回の「ヤマル2」も同等の生産を期待でき、丸紅は協議開始の覚書を締結したという。しかし……。
「ただの覚書ですよ。海のものとも山のものとも分からない」
 実はこの案件、三菱商事、三井物産も覚書を結んだのだが、両社の反応は冷淡だ。当然だろう。ヤマル半島は西シベリアの北の果て。欧州向けガスパイプラインと結ばれておらず、LNG船で運ぶにしても北極海航路は半年近く氷に閉ざされる。砕氷船を使えばコストがかかり、だいたいノバテクは米国の経済制裁リスト企業だ。
 ノバテクは仏中資本に飽き・・・