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連載

美の艶話 13

「性愛」の歴史と伝統
齊藤貴子

2017年1月号

 初めてじゃないけれど、慣れてない—。
 そういう青い季節は誰にでもあって、思い返してみれば、青春の輝かしい一ページどころか、顔から火が出るような恥ずかしい過去のオンパレード。何十分もキスをしていて唇がみるみる腫れ上がったり、何時間も揺さぶられ続けた帰り道にヒールの足がみっともないほどもつれたり……。いくら欲望に溺れるといっても程があるわけで、今だったら絶対この一歩手前でやめておく(やめてもらう)が、そんなことに思いもよらないのが若さというもの。ブレーキの掛け方をまるで忘れたような、一途で一直線な恋や性は、馬齢を重ねれば重ねるほどに遠く、ゆえに尊く、いつしか恥ずかしいというよりは、何だか微笑ましい青春の記憶となってゆく。
 そう、時に秘め事とも称される性愛について、微笑ましいという大らかな感情が生まれるには、良くも悪くもどうしても、時間の経過が必要となる。それを人ひとりの過去ではなく、人類全体の歴史のレベルで証明しているともいえるのが、世界最古の性愛像《アイン・サクリの恋人たち》だ。
 アイン・サクリという聞きなれな・・・