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社会・文化

「投機」としてのワインの魅力

株式や金より上をいく「液体資産」

2017年1月号

 英国のEU離脱(BREXIT)によって、高級ワイン界の"基軸通貨”とも呼ぶべきボルドーワインの投機的な価値に、再び光が当たっている。
 昨年六月の国民投票がもたらした通貨ポンドの下落は、英国内のワイン愛好家には値上げという苦しみをもたらしたが、国外のバイヤーには福音となった。英国の大手ワイン商は、ボルドー、ブルゴーニュ、シャンパーニュなどの高級ワインを、アジアや米国にも販売している。投資家や収集家は、安くなったポンドで購入して、保税状態で英国内の倉庫に保管している。フィナンシャル・タイムズによると、約二十億ポンド(約二千九百億円)相当の高級ワインが保管されているという。そうした流れの中で、最も買われたのがボルドーだった。
 高級ワイン商「BIワインズ&スピリッツ」の昨年七月の売り上げは、過去五年間で最高を記録した。ボルドーの価格は、二〇一一年から一四年まで作柄に恵まれなかったのと、ボルドーを賄賂代わりにしてきた中国の汚職禁止政策のあおりで不調だった。だが、昨年春にプリムール(先物取引)で売られた一五年が優良な作柄だったため、市場は上向いた。{・・・