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トランプ「乱気流」の一年

米国こそ国際秩序「最大の不安要因」

2017年1月号特別リポート

 天下大乱の兆しはすでに現れている。クリミア半島を強制的に併合し、シリアに軍事介入したほか、米大統領選挙がらみでハッカー攻撃をしたロシアの最高指導者プーチン大統領に、賛辞は送っても批判めいた言辞は控えてきた。国際テロリスト勢力の「イスラム国」(IS)打倒のためには、ロシアと協力すべきだとの主張で知られるマイケル・フリン元国防情報局(DIA)長官を大統領補佐官(国家安全保障担当)に、強い親ロ的立場から対ロ経済制裁措置に公然と反対してきた米石油メジャー、エクソンモービルのレックス・ティラーソン会長兼最高経営責任者(CEO)を国務長官にそれぞれ指名した。
 米新政権が、みずからイニシアティブを取ってロシアとの関係改善を図る行動は、固定していたかに見えた国際秩序の柱を揺り動かす。そもそも旧ソ連の脅威に対抗して創設された北大西洋条約機構(NATO)は存在意義を失い、解体に向かっていくのだろうか。NATO本部のあるブリュッセルでトランプ・プーチン首脳会談が開かれる図は夢ではないのかもしれない。米ロの対立が融けていくにつれて、中東では戦乱で疲弊しつくしたシリアが復興し、台頭すると考えられる・・・