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経済

武田薬品に迫りくる「落日」

新薬も人材もない「ジリ貧」状態に

2017年1月号

 武田薬品工業が近年何度目かの「転機」を迎えようとしている。二〇一六年七月二十九日、「研究開発を日米に集約」することを発表。日米に加え、英国、中国、ブラジルで研究開発事業を展開してきた拠点をグローバルに再編・集約するというのだ。 
 武田は新薬の開発成功確率を上向かせるため、研究開発に重点領域を定めている。▽がん▽消化器系疾患▽中枢神経系疾患▽ワクチン─この四つである。日本には中枢神経系を残し、がんや消化器系は全て米国・ボストンに拠点を移す。大転換といっていい。
 かつてのお家芸だった代謝性・循環器系疾患からは一六年一月に撤退を表明。重点領域の絞り込みはこのころから加速している。
「確かに武田の代謝性・循環器系の新薬パイプラインは大幅に縮小していました。それでも『糖尿病研究中止』への衝撃は大きかった。社内からは『わざわざそんな宣言をしなくても』という声が上がったといいます。現にこれまでの『上客』だった医師の不興を買いました。急激な方向転換をどうしても納得してもらう必要があったのでしょう」(国立大学教授)

「湘南研はすでに無用の長物」・・・