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経済

孫正義「世界政商」の化けの皮

「負債十三兆円」はいつ発火するか

2017年1月号

 稀代の“人たらし”は、こう言って近づいてくるという。
「ナイス・トゥ・ミーチュー。コール・ミー・マサ(正義)」
 二〇一六年十二月六日(米国時間)、ソフトバンクグループの孫正義社長が果たしたトランプ次期米大統領との電撃的な会談は、日米の政財界人を驚かせた。約四十五分の会談で、孫氏は四年間に総額五百億ドル(約五・七兆円)を米国の新興企業へ投資し、五万人の雇用を創出するとぶち上げ、初対面の次期大統領をして「マサは偉大な男だ」と言わしめた。
 準備は周到だった。会談場所のニューヨークの「トランプタワー」には、ソフトバンクが事前にリークした日本経済新聞、NHKをはじめ日米の報道陣が殺到、笑顔の二人をツーショットに収めた。その画像はメディアとインターネットを通じて世界中に配信され、ソフトバンクの株価上昇はもちろん、同社傘下の携帯電話事業者、米スプリントの当日の株価を前日比最大七%も押し上げたのだ。
「また孫さんの大風呂敷か……」と、国内の通信業界には怨嗟の声が渦巻く。とはいえ、米大統領選挙から一カ月足ら・・・