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社会・文化

縮みゆく在日米軍

「トランプ」で漂流する日本の安全保障

2016年12月号

 自らの安全を、自らの力によって守る意思を持たない場合、いかなる国家といえども、独立と平和を維持することはできない—。十六世紀、ルネサンス期イタリアの政治思想家だったマキャベリが名著『君主論』で喝破した識見は今も全く色あせない。この至言通り、米大統領選でのトランプ氏勝利は、米国の意向に追随してきた日本の喉元に匕首を突きつけた。
 あれだけトランプ氏の危険性を喧伝してきた日本メディアは半ば手のひらを返すかの如く「共和党主流派に通じるペンス氏が副大統領になるので、政策は大きく変わらない」などと楽観論まで口にする。だが「もはや世界の警察官ではいられない」と断言してきたトランプ氏の性根がそうたやすく翻ると考えるのは禁物であり、在日米軍のプレゼンスが低下していく事態は避けられまい。他方、日本で自主防衛論が高まれば、東アジアの緊張がさらに強まるだろう。安倍政権が綱渡りの安全保障政策を余儀なくされるのは必至だ。
 米ニューヨークにそびえるトランプタワーで安倍晋三首相がトランプ氏との初会談に臨んだ十一月十七日(日本時間十八日)。東京・市谷の防衛省では米軍空母艦載機の離着・・・