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連載

誤審のスポーツ史24

再試合を引き起こした大罪
中村 計

2016年12月号

 サッカーの競技規則には、こう明記されている。
〈プレーに関する事実についての主審の決定は最終である〉
 誤解を恐れずに言えば、たとえ「誤審」が認められたとしても、主審が下した判定が優先されるということだ。ところが、この不文律が覆されたことがある。
 二〇〇五年九月三日。ワールドカップアジア予選のプレーオフ第一戦、ウズベキスタン—バーレーン戦でのことだった。
 主審は、国内外で定評のあった吉田寿光が務めた。国際審判の現場は通常、四人でチームを組む。主審が日本人である場合、副審二人も、第四審判も日本人だ。
 主審の一試合あたりの走行距離は選手同様、約十キロにもなる。しかも、同じペースで十キロを走るのならまだしも、そのほとんどがダッシュとストップの繰り返しだ。審判である前に、アスリートであることを求められる。
 試合当日の気温は三十一度と高く、吉田は選手から水を回してもらうなどし、体力と集中力を維持していた。一—〇とウズベキスタンのリードで迎えた前半三十九分のこと。バーレーンの選手がペナルティエリア内でハン・・・