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政治

《政界スキャン》

トランプ会談「一番乗り」の代償

2016年12月号

 本人も伸るか反るかのバクチ気分だったことだろう。トランプ次期米大統領当選後、世界の政治指導者でいの一番にニューヨークの自宅へ駆けつけた安倍晋三首相の思い切りは、大胆とも軽率とも未だ評価を定め難い。
 初対面で一時間半。話の中身は非公表だが、それでも勝負の立ち会いに似て、両者の心理的優劣は、断片からも組み立てることが可能だ。初戦はオウンゴールで安倍氏の負けである。会談後、記者団へのコメントがまずい。
「じっくりと胸襟を開いて率直な話ができた。トランプ次期大統領はまさに信頼することができる、信頼できる指導者であると、このように確信をした」
 真っ当すぎる。空々しい。力みに不安と焦りがのぞく。
 これは、職業政治家を相手に、官僚たちがお膳立てした正式の首脳会談の後、述べる決まり文句そのままだ。事務方の積み上げがあれば、相手の人格がどうであれ、同盟関係をこのように言い表す綾は当然あり得る。
 だが、今回は状況が全然違う。招かれた摩天楼の最上階は、なぜか室内に古代ギリシャ建築様式であるコリント式の円柱が無意味に何本も立ち並び、柱頭の葉から壁や天・・・