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政治

惨敗の安倍「地球儀俯瞰外交」

「TPPと北方領土」で負った致命傷

2016年12月号

「あなたは多くの実績を残した偉大な政治家だ」
 次期米国大統領ドナルド・トランプは、首相安倍晋三との最初の電話会談で終始安倍を持ち上げた。安倍がこのトランプの肉声を胸に秘めて、妻昭恵とともにニューヨークに向けて出発したのが十一月十七日午前十一時過ぎ。ニューヨークでは世界のトップリーダーの中で誰よりも早くトランプとの会談が待っていた。さらにニューヨークからアジア太平洋経済協力(APEC)首脳会議に出席するために訪れるペルーのリマでは、ロシア大統領ウラジーミル・プーチンとの北方領土をめぐる日ロ首脳会談が続く。
 トランプとプーチン—。二〇一七年以降の国際政治に極めて大きな影響力を行使するのが確実なビッグ2との連続会談は安倍にとっても最高の檜舞台になるはずだった。
 まずは大統領選挙中から、環太平洋経済連携協定(TPP)に反対の意を繰り返し表明してきたトランプを直談判で翻意させる。そしてプーチンから領土交渉進展に向けて譲歩を引き出し、十二月十五日のプーチン来日の土台を作る。これが安倍及び官邸が意図した「十一月外交」のシナリオだった。
 しか・・・