タイ内政は血みどろの抗争へ
外資企業「脱出」が本格化
2016年11月号
頂点に立つ人物の死が国の運命を変えることは少なくない。権力構造や社会が〝重力〟を喪失し、流動化を始めるからだ。プミポン国王を失ったタイはまさにその状態にある。クーデターで権力を得たプラユット政権は国王という正当性の後ろ盾を失い、今後、強権政治に向かわざるを得ない。タイは「二十世紀型混乱」に戻り、軍が学生、市民に銃口を向けた一九七三年、九二年のような流血の混乱もあり得る。日本はじめ外資企業のタイ脱出(タイグジット)も本格化するだろう。
かつてタイ人の最大の娯楽は格闘技のムエタイだったが、この十年ほどはサッカーが人気ナンバーワン。タイ国内のプレミアリーグだけでなく、英国のプレミアリーグも全試合が中継され、昨季優勝したレスター・シティはオーナーがタイ企業だ。だが、タイ国内リーグは国王死去で今シーズンの全日程を打ち切った。
国民はそれを当然のものと受け止め、政府は外国人観光客にも「黒っぽい服装」の要請を出した。国が一丸となった服喪にプミポン国王の存在の大きさと国民の喪失感が窺える。公務員の服喪期間は一年間だが、店舗や学校、イベントは数週間後には・・・