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崩れそうなアジアの「冷たい平和」

ケント・カルダー (ジョンズ・ホプキンス大学東アジア研究センター長)

2016年10月号

 ―アジアでは北朝鮮が核実験を行い、中国が東シナ海、南シナ海で攻撃的姿勢を続けています。今のアジア情勢は「冷戦」でしょうか?
 カルダー 「冷たい平和」または「冷たいデタント(緊張緩和)」だろう。アジアには各国間に相互不信があり、時がたつごとに深刻になっている。
 北朝鮮は以前、核やミサイルの実験後、国際的反応を見て、交渉に移った。今は違う。日本や米国を実際に攻撃できるミサイルや核兵器の能力獲得に向けて突っ走っており、非常に危険だ。
 中国には、北朝鮮を止める役が期待された。だが、中国は北朝鮮政権の安定のほうに関心が強く、北朝鮮との隣接地域の経済利害もあって北朝鮮に強硬に出なかった。日米はもちろん、特に韓国の朴政権が失望した。
 ―「日米韓」対中国の構図ですね。
 カルダー 大まかに言えばそうなる。韓国はいわゆる従軍慰安婦問題で日本と合意し、外交を日米側に大きくシフトした。日米韓の「トライアングル」は、・・・