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連載

西風 425

物足りない「省庁地方移転」

2016年10月号

 政府が東京一極集中を是正し、地方創生を果たすために鳴り物入りで進めていた政府機関の地方移転の中身が固まった。文化庁が京都府に全面移転するほか、総務省統計局が和歌山県、消費者庁が徳島県に一部の業務を移す。省庁の地方移転は四十二道府県が六十九機関の誘致を希望していたが、わずか三機関の移転にとどまった。
 それでも文化庁の移転を希望した京都府は「満額回答」を得た。総務省統計局がやって来る和歌山県の仁坂吉伸知事は「喜ばしい」とコメント。関西は他の地域に比較すれば、それなりの恩恵を受けることになった。
 文化庁の定員は約二百三十人。国会対応などのため一部の職員は東京に居残るので、京都に移るのは二百人程度。移住するのは家族を含めて一千人に遠く及ばない。総務省統計局や消費者庁で、移住する職員はせいぜい数十人とみられる。
 それでも和歌山県は「統計データ利活用センター(仮称)」の設置を決めたほか、データ活用の重要性を認識、周知させるためのシンポジウムを毎年開催する計画。大手企業の撤退などによって経済の地盤沈下と人口減に悩む和歌山県にとって、統計局の移転は貴重なプラス要素・・・