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ローマ法王が 守旧派に変節!?

バチカン銀行改革は見事に「頓挫」

2016年10月号

 カトリック聖職者が未成年の男児を性的に虐待していた事件は近年、世界中で報道され、もはやニュースにもならない。ところが非難の渦中にある人が、教会を代表する高位聖職者であれば、耳目を集めるには十分だ。
 しかもその人物が、フランシスコ法王の命令で、ローマ法王庁の金融機関の改革を担当していたとなると、今度は陰謀の臭いが漂い始める。邪魔者を闇に葬ってきた、過去のバチカンの暗黒史に連なる、新たなミステリーの開幕である。
タイミング良すぎる性犯罪告発
 オーストラリア出身のジョージ・ペル枢機卿は、バチカンの高位聖職者の中で、文字通り頭抜けた存在だ。七十五歳の今も背筋をピンと伸ばし、フランシスコ法王より頭一つ高い。緋色の衣をまとった一メートル九十センチ超の巨躯は、遠くからでも目に付く。ヘビー級のボクシング選手を父に持ち、自身もオーストラリアンフットボールのスター選手だった。
 ペル枢機卿は教会運営でも豪腕で知られた。メルボルン大司教、シドニー大司教を歴任して、カトリックを代表して率直な発言をすることもしばしば。オーストラリア国内では高い知名度を誇った。{br・・・