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WORLD

《世界のキーパーソン》ユディット・シマンカ・エレーラ(「コロンビア革命軍」FARC和平交渉担当者)

内戦終結に尽力した「女ゲリラ」

2016年9月号

 南米コロンビアで半世紀以上続いた、政府軍とFARCの内戦が終わった。キューバの首都ハバナでFARCを代表して合意を発表したのが、この女性である。今年五十一歳で、自身も内戦勃発(一九六四年)後の生まれであるという事実は、この国の悲劇がいかに長く続いたかを物語る。
 アメリカ大陸の発見者コロンブスを国名にとり、天然資源も豊富なコロンビアは、長らく統治者に恵まれなかった。同国のノーベル文学賞作家、ガブリエル・ガルシア=マルケスがその作品で描き出したように、数十の特権家族が富と権力を独占する、ゆがんだ社会だった。コロンビア共産党の武装組織FARCが誕生する前も、十年以上、国内騒乱が続いていた。
 陰惨な内戦が長期化したのは、キューバ革命の南米への波及を恐れる米政府が、コロンビア政府を全面的に支援したためだ。だが、FARCは貧農からの強固な支持に加えて、国内産コカインの密売により、「世界一豊かな極左ゲリラ」と評されるほど、潤沢な資金力を誇った。「ナルコ・テロリスト」の先駆だった。アマゾンの熱帯雨林は格好の隠れ家になった。
 エレーラがFARCに加わった八〇年代前半・・・