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社会・文化

《日本のサンクチュアリ》「靖國神社」の内紛

「歴史修正」と訴訟沙汰で大揺れ

2016年8月号

「靖國で会おう」。その言葉を残して、太平洋の大海原にはかなく散っていった幾多の若い命。東京・九段の杜に包まれた靖國神社に今年の夏もまた、旧日本軍の兵士や遺族が鎮魂の祈りに訪れる。この社は一九七八年にA級戦犯が合祀されてからしばらくして、日本の軍国主義、そして先の大戦の正当化の象徴として中国や韓国との間で日本外交の抜きがたい鋭利なトゲとも化した。
その靖國神社がいま、最高位の徳川康久宮司の明治維新をめぐる歴史認識発言やA級戦犯の扱いに関する問題で大揺れしている。足元のこの激震は靖國神社の来し方行く末ばかりか、中韓を中心とする近隣外交にも波紋を広げるのは間違いない。日本の現代史と表裏一体の特殊な社は、内憂外患を抱えた状況で七十一回目の終戦記念日を迎える。
「文明開化という言葉があるが、明治維新前は文明がない遅れた国だったという認識は間違いだということを言っている。江戸時代はハイテクで、エコでもあった。特に教育。識字率が高く、読み書きができない人が少なかった。モールス信号の実験も行われる寸前だった。明治維新以降は海外からの情報、技術が入ってくるのが加速したということ」&n・・・